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緑の達人に聞け

信州の各地で、美しい緑のある環境づくりに取り組んでいるエキスパートたち。どんな仕事をして、どんな発見に出会ってきたのでしょうか。若手から中堅まで、信州の緑の達人たちが、信州の造園の今を語ります。

仕事を身につけるとは自分の身体に覚えさせていくこと。

花﨑哲也さん
花﨑哲也さん
38歳 長野市
株式会社風間苑

 高校を卒業後、地元のゴルフクラブに勤務し、グリーンキーパーとしてコースの維持管理に携わっていたという花﨑哲也さん。その職場で出会った奥さんの実家が、現在の会社だったそうです。
 もともと造園に関心が深く、「ゴルフ場がオフとなる冬期には手伝いに来ていたのですが、本格的に造園の仕事に取り組もう」と飛び込んだのは28才の時。芝草管理技術者の資格を持ち、芝の維持管理については経験を重ねてきた花﨑さんですが、最初のころは「造園の世界の奥深さを改めて知らされた思いだった」そうです。
 樹の剪定や花の植栽、時期ごとの管理など作業の一つひとつに蓄積されたノウハウがあり、高度な技術や知識の裏付けが込められています。
 「まずは教えていただいたとおりにやってみる。何度も繰り返して、自分の身体に覚えさせていく。繰返し繰返し、ていねいに。そうしないとなかなか身につかないものなんですね」と語ります。その積み重ねが、庭師としての目と技を高めていきます。
 一方、その間に造園施工管理技士や重機の運転技能資格などを取得し、携わる業務の幅を広げてステップアップを図ってきました。個人のお宅の庭づくりから街路や公園の維持管理まで幅広い仕事に携わりますが、生き物を相手にするただけに、つねに「勉強」を意識しているそうです。

花﨑哲也さん
 花﨑さんが得意とする芝生をとっても、大きく分けて日本芝と西洋芝があり、用途や目的、環境に応じたさまざまな種類があります。その育成や管理もそれぞれに多様。刈り込みや除草のしかたなども、気候風土に配慮しながら、最適な方法を模索していくのだとか。「これからも着実に積み重ねをしていきたいですね」と語ります。
 

樹の声が聞けたら、どんなに素敵かと思う。

栁澤幸一さん
栁澤幸一さん
28歳 軽井沢町
株式会社柳沢造園建設

 軽井沢生まれの軽井沢育ち。幼い頃からスピードスケートをやっていたという栁澤幸一さんは、快活なスポーツマンです。
 同じく幼い頃から慣れ親しんできた造園の仕事に進もうと、高校卒業後は首都圏の専門学校へ進学。さらに専門的な技能と知識を学ぶため埼玉県大宮市にある造園会社に入社。1年間の修業の後、軽井沢へ戻ってきました。
 会社があるのは軽井沢バイパス沿いの木立の中。周囲にはリゾートホテルや別荘が広がります。仕事の内容も、そうした別荘の庭園づくりや維持管理などが多くを占めています。
 栁澤さんが庭の管理を担当しているお客様の別荘に同行してみました。庭先にはさまざまな樹木や野草が植えられ、ていねいに植えられた苔が広がってきています。
 「このお客様は山野草に造詣が深いんですよ。そのご要望をうかがいながら、それではこんな工夫をとか、自分なりにご提案をさせていただきながら進めているんです。年々形が整っていく、庭として成長していく姿を見られるのは、仕事ですけど楽しみですね」と語ります。
 もちろん草も樹木も生き物。適した環境でなければ育ちません。ことに軽井沢は厳寒の冬をかかえるため、木の育ちは遅く、手入れを怠れば荒れてしまいます。そうした気候風土の条件を踏まえて、一歩ずつ、庭の姿を整えていく。時間をかけて創りあげていくことが造園の醍醐味です。

栁澤幸一さん
 「樹の声が聞けたら、どんなに素敵かと思うんですよ」と栁澤さん。草や樹木の声に耳を傾けて、より心地よい環境を育んでいく。と同時にお客様と触れ合いながら、満足いただける庭づくりに取り組んでいく。「だから庭師って、ある意味究極のサービス業なのかも」と語ります。
 長い時間をかけて庭をつくりあげていくためには、樹からもお客様からも信頼されることが大切。「そういう信頼を高められるように、私も頑張っていきたい。未来につなげていきたいんですよ」と語る栁澤さんです。

 

造園には、地域の文化が色濃く息づいている。

小林大祐さん
小林大祐さん
37歳 大町市
株式会社信濃美植

 大学へ進んだ頃までは「将来は体育の教師とか指導者になれたらなと思っていた」という小林大祐さん。しかし、いざ本格的に就職をと考えだしてみると、実家の仕事を継いでいきたいと強く思うようになったのだそうです。
 就職したのは東京にある大手の造園会社。ここで5年半、造園や樹木についての基礎的な知識や技術をしっかり学ぶとともに、さまざまな造園工事の施工に携わって、施工管理のノウハウを身につけました。「さまざまな造園工事に携わることができたのは、今思い返すと得難い経験でした」と小林さん。
 そして満を持して戻ってきたふるさと。ところが、いざ仕事に取り組んでみると、同じ造園工事と言いながら、勝手が違う。「あぁこれは、また一から勉強だと思いました」と語ります。
 雪のない関東と雪国の違い、土壌や土質の違い。気候風土が異なれば扱う樹種もまったく変わってきます。庭木の好みや配置なども土地の文化が色濃く息づきます。
 「植栽のしかた、手入れの方法など、どれをとっても地元の知恵に学ばなければわからないことだらけでした。でも逆にいえば、そういう地域性が、造園の奥深さであり、魅力でもあるんだと思います」と小林さん。

小林大祐さん
 現在は、大町市を中心として県内各地に赴き、庭木の剪定や外構工事、公園の維持管理などに携わります。さらに県有林などの森林整備にも。
 造園という仕事には、一つとして同じものはありません。対処していくには、自分の持つ知識や技術、経験が頼り。
 「引き出しをどれだけ持っているか。いろいろな造園の仕事を見ておくことは大切です。私も、若い時は、うわさや評判を聞きつけては見に行きましたね」と語ります。
 何事にも手を抜かず、気を配り、気を利かせられるようにと、つねに心がけている小林さんです。
 

真のプロを目ざして技能五輪全国大会に挑戦。

伊藤秀幸さん
伊藤秀幸さん
23歳 飯田市
文吾林造園株式会社
池田典史さん
池田典史さん
24歳 飯田市
文吾林造園株式会社

 大正12(1923)年創業という歴史を刻む飯田市の老舗会社で仕事に取り組む、池田典史さんと伊藤秀幸さん。それぞれ大学と専門学校で造園緑地工学を学び、造園のプロとなることを目ざして入社してきた若手です。
 昨年平成22(2010)年10月、2人はチームを組んで第48回技能五輪全国大会(主催中央職業能力開発協会)に出場しました。
 技能五輪は「次代を担う青年技能者の育成を図る」ことを目的としたもので、大会の競技は40種目。その内「造園」競技には、全国各地を代表する36名が参加。横浜市みなとみらいのパシフィコ横浜を会場として2日間の競技が行われました。
 「自信になりました。でも本音を言えば金色のメダルが獲りたかったですね」と池田さん。「池田さんに誘われてチャレンジしたのですが、練習から大会まで、本当に貴重な体験をさせてもらいました」と伊藤さん。

池田典史さん・伊藤秀幸さん
 技能五輪挑戦を申し出てから、先輩の協力も得て、仕事の合間に猛特訓。結果、健闘した2人は、敢闘賞に輝きました。
 先輩たちは、5人の樹木医をはじめとしてさまざまな専門資格を持つプロ集団。その中にあって、技術や技能の習得には2人とも貪欲です。樹木医補として、各地の樹木診断にも先輩社員に同行するなど、経験を重ねています。
 伊藤さんは「まだまだ未熟ですが、取れる資格は貪欲に取っていきたい。先輩方の技術を吸収したいです」と語ります。
 池田さんは「この会社は海外との連携も図っていて、とてもグローバルな視野で取り組めるところが魅力。自然と共生する造園の仕事をもっと追究していきたい」と語ります。
 長野県内にとどまらず関東圏などでも幅広く総合造園工事業を展開する会社の中で、高度なスキルを持った造園のプロを目ざしている2人です。